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もめ事が終わると、どうやらタイミングを計っていたらしく先ほどの受付嬢さんが駆け寄ってきた。
「お、お待たせしました! 白金貨六枚と金貨百枚です!」
「ありがとう。あそこの奴らどうします? 俺怒られます?」
「い、いえ! 話の経緯は見ていましたし、私の対応も悪かったと思います。すみません、何かあっても私から説明しておきますのでご安心ください!」
そうって受付嬢の女の子ミリーは頭を下げた。
ミリーは紺色の綺麗な髪で、前髪がやや長く表情が読みにくい子だった。
所謂『メカクレちゃん』だ。
昔読んでた少年漫画でそんなキャラがいた。
とりあえず金銭を受け取り、その場を後にするとカウンターの中から屈強な男達が現れ、ユーコット達を連行していった。
「主様お見事でした」
後鬼が小さくつぶやいた。
彼女は小さく手をパチパチと叩く。
「よく二人とも手を出さなかったね」
普段の二人を思えば、彼女たちが過剰反撃してユーコットは生死を彷徨う事になったかもしれない。
すると後鬼が一冊の小さな手帳サイズの本を取り出した。
それは冒険者ギルドで登録した時に渡された規約書だった。
「コレを読んでおきました。見れば冒険者同士の諍いに関しては基本ギルドは不干渉。一般人への攻撃は厳禁といった案外緩いものでした。ですが内容の殆どが冒険者同士の内容である事が殆どで、一般人である私たちが冒険者を叩き潰した場合の情報がありませんでした」
まあ、そりゃそうだよな。
一般人にやられる冒険者ってのも変な話だ。
「そこで、今回は主様の向上した身体能力を確認するという目的もある為、あの当て馬に役立ってもらったわけです」
今、はっきりと当て馬って言ったぞ。
完全に噛ませ犬である。次からカマセくんと呼ぼう。
「どう見ても、主様に一撃を与えられるような奴に見えへんかったからなぁ。返り討ちされるのが目に見えてたわ」
前鬼もそう言って笑う。
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