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「で、どうだった? 二人から見た感想は」  金を仕舞いつつ、聞くと二人は満足そうに答えた。 「驚いたわ、あの一瞬の動きは満点を上げたいところや」 「ええ、私も驚きました。一瞬で間合いを詰めた速度は、アルベールとジョエルの二人と同等と言っても良いかもしれません」  流石にそれは言いすぎだろう。  彼らの強さはこの目で見ている。  俺なんかがあっさり追いつくレベルだとは思えない。  それでも褒め言葉として受け取っておこう。    暫く談笑しつつ待っていると、ジョエルがやってきた。 「待たせたかな? 何か大きな音がしたけど」 「ん、問題ないよ」 「そう? こっちで総合ギルドの管理者に連絡付けたから合わせたいんだ、いいかな?」 「ああ、頼むよ」  ジョエルの後をついていくと扉の前に付いた。 「ここか?」 「いや、これで最上階へ行くよ」 「へ?」  扉を開けて中に入ると、青白い魔法陣が書かれた床が見えた。  彼に言われるまま陣の中に入ると『転移、十階』と告げた。  すると陣が発光した後、一瞬強い浮遊感を感じると次第に光が収まる。  部屋の様子は何ら変わっていないが、ジョエルは部屋を出て行く。  今ので移動が終わったのか?  部屋を出るとそこは大きな部屋で、魔法学院で見た理事長の部屋の様な見事な調度品が飾られた応接室だった。 「一瞬で移動しよったわ」  前鬼が呆けた様な顔できょろきょろとする。 「主様であればこのくらいできます」  何やら張り合う様にして後鬼が言う。    いやいや、後鬼の中で俺はどんだけ評価高いの。  それを苦笑いしつつ、先行するジョエルの後ろをついていく。  部屋の奥には背を向けたまま、窓から街並みを眺める男がいる。 「お待たせしました。アルヴォアさん」  アルヴォアと呼ばた男が振りかえる。  灰色の髪をオールバックにし流し、蓄えた髭を綺麗に整えた男がニコリと微笑んだ。 「おう待ってたぞジョエル……そいつは?」 「初めまして、Eランク冒険者のハセオです。彼女たちは私兵の前鬼と後鬼です」  そう挨拶をすると、目を細めてこちらを吟味するようにして見る。    まるで心のそこまで見透かされそうな視線に、思わずぞくりと寒気がする。
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