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ああ、遂にこの時が来てしまった。
夕方、私は沈む陽を近くで眺めるために海岸へ向かっていた。
そこで町の男衆に囲まれたのだ。
いつでも言われる言葉は変わらない。
“何故見目が変わらない”“気味が悪い”“化け物”“町を出ていけ”
最初から分かっていた事だ。
もう今更どうこうと言った事は無い。チクリと胸を刺す痛みは感じるが、それだけだ。
…ああ、それだけじゃあなかった。
引っ立てられるようにして、海岸沿いを町のはずれに向かって歩く中。ただ一つの後悔が胸を過る。この様子だと町の自宅に帰る時間も与えてもらえそうにもないが...。
彼女に別れを告げられなかった。
この町を出る前に一目見ておきたかった。
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