私はすべてを失った。

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 この胸の(うつ)ろが埋まる事はもうない。 そう…町のはずれに着くまではそう思っていた。  海岸沿いを町はずれに向かう途中には広場がある。 目に入ったのはとても信じられないような光景だった。  長く美しかった射干玉(ぬばたま)の髪はザンバラになり、顔や体のあちこちに決して軽くはない怪我を負っていた。 微かに聞こえてくるのは化け物や魔女などと言う罵倒で、それだけで彼女がどうしてそのような目にあっているのかを察してしまった。
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