私はすべてを失った。

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 いくら考えても答えなんて出なくて、どんどん嫌な方向へ考えてしまっていた。  そんな時に1人の女性と出会った。 小さな港町だった。そこはちょっと高台に登れば綺麗な海や町並みが一望(いちぼう)できるような、本当に小さな町で。彼女はその町で唯一の花屋の店主だった。  とても、そう。とても綺麗な人だった。 風に(なび)く、長く真っ直ぐな緑の黒髪。黒曜石の様な煌めく瞳。しゃんと伸びた背筋。日に焼けてない真っ白な肌。そして髪を結い上げたが故に見える細い首筋…。  一目惚れだった。 恋とはこんなにあっさりと落ちるものなのか、と感嘆した覚えがある。  何年も、何年も。 たった独りで生き続けて来たと言うのに、初めて感じた感情だった。 ドクリ、と心臓が脈打ち。1度視界に入れば気づかぬ内に目で追っていた。  この町はやめておこうと、そう思ったばかりだったと言うのに。 彼女を見つけてしまった私は、意図も簡単にその考えを(ひるがえ)していた。
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