15人が本棚に入れています
本棚に追加
全体的に白く殺風景な部屋の端で、面接官はある書類を眺めていた。
スーツをまとっており、スマートで清潔感のある男性だ。年齢は60くらいだろうか。
通常、天上界では若い頃の姿をとる者が多いが、職業柄、多少の貫禄も必要なのだろう。
彼が手にしている書類はふたつ。
ひとつは「履歴書」…これには過去世、どのように生きてどのように死んだか、こと細かに記されている。
もうひとつは「人生計画書」…これは来世の計画そのものである。つまりは過去世の反省を踏まえ、来世、何を課題とし使命とするか、それを成し遂げるためにどのような生き方をするかが記されている。
そして、その人生計画書には、既に判が押されていた……分厚く束ねられた紙の表紙に、でかでかと赤く「受理」という文字が烙印されている。
面接官はどこか緊張した面持ちで、一枚一枚をめくったり、パラパラと読み流したりを繰り返している。
ーーコンコン。
ノックの音に面接官はハッとして、扉の方向に振り返る。
「少し待ちなさい。準備が整い次第、お呼びしますから」
最初のコメントを投稿しよう!