たとえ、死んでも。

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「はい、存じております」 青年は礼儀正しく答えた。 「ではその口から、今の地上の状況を語ってみなさい」 「はい。西暦2100年、今や地球の人口は100億を超えようというところまできています。これは地球が抱えられる限界数に等しい。空気は汚染され、水や食べ物も足りず、地域格差はますます大きくなっています」 「ふむ」 「ひどいのは環境だけではありません。人々の心境も、です。 生まれたら天上界での記憶を忘れてしまうため、生きる目的がわからず、死んだら終わりと思って自己中心的に振る舞う人が、あまりに多い……。 人から奪い、自らの要求を満たす。 奪った相手を不幸にし、今度はその人が他の人から奪い、さらに不幸な人を量産する。 この連鎖です」 「その通り」 面接官は賛同するように頷く。 「して、天上界の今後の計画については」 「はい。それも……」 青年は少し哀しげな溜め息をついて言う。 「天変地異、ですよね?」
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