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その日は早朝から雨が降っていた。
雨は嫌いじゃないが、雨の中出かけなきゃいけないのは嫌いだ。そんなことを考えながら食事を済ませ、憂鬱な気分のまま僕は家を出た。
いつも通りの日常。雨が降っているかいないか、それだけの違いのはずだった。あの子に出会うまでは。
「あの子」
そういう表現があっているかわからないけど、見た目は子供だからまあいいだろう。あの子は雨の日必ずそこに現れる。人なんか誰も来ないような路地裏の空き地。水はけは悪く、雨が降ればすぐに水たまりができる。というか、もはや沼だな。その沼の浮島みたいなところにあの子はいる。雨が降ったら現れて、止んだらいなくなる。消えると言った方がいいだろうか。いつも話している途中で晴れやがる。
最初は迷子かと思った。けど、話していると不思議だな。何も気にならなくなった。あの子が誰なのか、なんでこんなところにいるか、自分が雨に濡れていることも。おかげでいつもびしょ濡れだ。そういえばいつもどんな話をしていたっけ。
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