雨ノ邪鬼

2/2
前へ
/4ページ
次へ
 しばらく雨が降らない日が続いた。快晴の空を見ると気分は爽快。外に出るのも迷うことはない。むしろ進んで出たいくらいだ。別に普段引きこもっているわけではないが。  しかし、何だろう。何か物足りない。外で友達と遊んでも、どこかそんな感情がくすぶっていた。早く雨が降らないだろうか。  久しぶりの雨の日、しかも風も強く横殴りだ。これでは傘も役立たずだな。こんな日は引きこもるのが一番だ。そう思って二度寝をしようと思ったが、気づけばあの路地裏に来ていた。ここは風の影響も少ないようだ。まあ、当然びしょびしょだが。すっかり忘れていた。 「あの子」 こんな日でも待っててくれたのか。僕とあの子だけの秘密の空間。足りなかったのはやっぱり。久しぶりだからか、今日はやけにはしゃいでいるな。  それからしばらく、ある噂が流れ出した。雨の日にとある路地裏で、妖怪が現れると。 雨の路地裏の水がたまった空き地。男が1人、池のようになっている空き地の浮島のような場所で歌っているそうだ。それだけだとただの不審者だが、幻想的で怪しい雰囲気に、見た人は口々に妖怪だ、鬼だと言うらしい。それだけで鬼かよ。不思議なこともあるもんだな。僕も一度見てみたい。  あの子にもその話をしてみようかな。そう考えながら、あの子が奏でる音色に耳を傾けていた。雨の日だけ水面に現れる小さな奏者。浮島のステージ。雨の日はいつしか大好きになっていた。  あなたは雨が好きですか。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加