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終わりからの始まり
シュウシュウと蒸気の音 埃と錆びた鉄 僅かな硝煙の匂い
チリついた香りに閉じていた眼がそっと開けられた。
ぼんやりとした感覚から覚醒したイムリ
其処は時間倍速管理塔の中心部―――
己の手が時間管理のネジ巻きに触れている事に気付く
そのネジはいくつもの配管に繋がっており、その管の先、そこかしこで爆発を起こしながら噴煙と蒸気をまき散らしている
倍速のメーターは“50”に合わさろうとしていた
「あれ…私なんで50倍速にして…私…」
言葉は紡がれず、管理をしている一人の男性に視点を合わせる
「なにやってる、戻せイムリ!」
そう叫ぶのは幼馴染みの青年アキだった。
アキに注意され2倍速まで戻す
「なんで私こんなこと…」
「すぐに通常に戻したから大丈夫だろう、どうしてお前こんな事を・・・いい、イムリ訓練に戻れ」
アキは訝しい顔をしたままイムリに自分の持ち場に戻れと促した。
ぼんやりとした頭のまま、考えを巡らす
『白昼夢・・・?』
不思議な感覚に囚われながらも
イムリは一人がやっと乗れる程度の滑車ロープに足をかけ、アキの背中を見ながら、
倍速塔の出口へ向かう
『私、なんで知らないうちに倍速塔にいるんだろう?』
その瞬間に感じた違和感が拭えず
頭で記憶を辿る、私は何か重要な事を忘れている…
何故、勝手に倍速なんかにしようと…おかしいな
倍速塔の管理、使用は管理者であるアキだけにしか許されていない、
こんな行為見つかったらただじゃ済まされない。
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