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耳長は金切り声を上げながらバランスを崩し、ジタバタと暴れまわる。まるで羽をむしられた蛾のようだ。見ているだけでうるさく、目障りだ。だか、それも喉元に剣を突き立てるとすぐに収まった。
これで二人。だが、王様や将軍達からすれば、たった二人。これだけでは彼らは満足しない。
癇癪を起こした餓鬼のように、満たされることのない欲求を埋めるため号令を下す。
殺せ、殺せ、殺せ。
奴らの口からは狂ったように同じ言葉が繰り返される。
目の前の敵を殺せ。帝国の敵を殺せ。我らが王に逆らうものは皆殺せ。私たち忠実な兵士(てごま)達は号令のままに敵を貫き、切り崩し、殺しつくす。
さらなる血を求め、さらなる死を求め、私は前へ前へと突き進む。手近にいた耳長の肩から腹にかけて斬りさき、さらにその鳩尾に剣をねじ込む。
足で耳長を蹴り飛ばして剣を引き抜くと、後方に控えていたもう一人に斬りかかる。
耳長は杖を頭上に掲げ私の剣を防いで見せたが、そのせいで下はがら空きだ。足を払うと簡単に耳長の態勢は崩れ、右肩から地面へ倒れ伏せた。
強かに肩を打ったことで苦悶の表情を浮かべるが、その顔にはすぐに恐怖が貼りついていく。
私は剣を高く掲げ、一息に切っ先を耳長へと突き落す。
私に向って何かほざいていた(勿論、私には理解出来ない言葉で)口からは、言葉の代わりに血があふれ出し、泪と共に大地を濡らしていく。
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