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それを横目に捉えながらも、私はすぐさま剣を引き抜く。殺しの興奮や達成感などに浸っている時間など、私にはなかった。なぜなら、私の疲労など御構い無しに、敵の攻撃はその激しさを一層強めているのだから。
常に動いていないとすぐに彼らの杖の矛先にとらえられ、あっという間に細切れか、丸焼きの私の出来上がり。もしくは原型もとどめないただの肉片としてそこらへんに散らばってしまうことだろう。
一人二人と私の仲間たちが耳長達の魔法によって死んでいく。
私は死体となった同僚を盾にしながら攻撃をやり過ごし、なおも出来る限り多くの耳長を殺していく。返り血が私の鎧や私の顔を汚そうと構いはしなかった。敵を屠り死体の山を気づくことこそ、それこそが私の生まれた意義であり、それだけが私の取り柄なのだ。
しかし、人間の体は無限の体力を備えているわけではない。長い時間動き続ければいずれ己の体にガタがくる。ちょうどその時が私の体が悲鳴を上げ始めた。膝に力が入らず、思う様に剣も振り上げられなくなってくる。疲労は私の手足を着実に蝕み、剣を振るう力を、地を蹴り大地を駆ける膂力を奪っていく。
闇雲に振るった剣は耳長の胴を捉え、深々と横腹にめり込んだ。耳長の顔には苦悶が浮かび、口元からは赤黒い血液が溢れる。しかし、まだ立っている。まだ私を殺そうと杖を握りしめている。
殺さなくてはならない。
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