1

3/13
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
初めて顔を見せた時を思い出す。 どこの子供がきたのかと思ったので 『何か用か?』と訊ねたら、 『赴任してきました。』と書類を手渡してきた。 赴任の辞令と身上書があり、名はルピア・サンルクトで24歳とあった。 書類を渡しただけで名前も名乗らず、愛想笑いのひとつも浮かべる事もなく、黙々と仕事に取り掛かり始めた女。 こちらの仕事の邪魔をしないだけ、まだマシかと思い、放っておく事にした。 どの位の時間が過ぎたのだろうか。 俺は完全に彼女の事を忘れていた。 今日は久し振りに仕事がはかどった、と休憩をはさもうとしたら、こちらを見ていた彼女と目が合った。 ああ、そうか、居たんだったなと思い声を掛ける。 「休憩にするか。 どこまで進んだ?」 「終わりました。」 うん? 「終わった?」 「はい。」 今日中に終われば恩の字だと思った仕事が終わった? 「ーーー、休憩後、こちらの仕事も頼む。」 「かしこまりました。」 それは、予想外に良い人材なのかも知れないと小躍りしたい心地だった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!