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初めて顔を見せた時を思い出す。
どこの子供がきたのかと思ったので
『何か用か?』と訊ねたら、
『赴任してきました。』と書類を手渡してきた。
赴任の辞令と身上書があり、名はルピア・サンルクトで24歳とあった。
書類を渡しただけで名前も名乗らず、愛想笑いのひとつも浮かべる事もなく、黙々と仕事に取り掛かり始めた女。
こちらの仕事の邪魔をしないだけ、まだマシかと思い、放っておく事にした。
どの位の時間が過ぎたのだろうか。
俺は完全に彼女の事を忘れていた。
今日は久し振りに仕事がはかどった、と休憩をはさもうとしたら、こちらを見ていた彼女と目が合った。
ああ、そうか、居たんだったなと思い声を掛ける。
「休憩にするか。
どこまで進んだ?」
「終わりました。」
うん?
「終わった?」
「はい。」
今日中に終われば恩の字だと思った仕事が終わった?
「ーーー、休憩後、こちらの仕事も頼む。」
「かしこまりました。」
それは、予想外に良い人材なのかも知れないと小躍りしたい心地だった。
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