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彼女が来て2ヶ月が過ぎた頃、俺は訓練で右の手首を痛めた。
生傷の絶えないのはいつもの事だったが、手首を痛めては書類にサインが出来ずに困り果ててしまった。
ルピアにサインをさせる委任状でも作ろうかと悩んでいると、
「失礼します。」
そう言って、俺の手首に触れてきた。
軽く握っているだけなのに、なんだか温かく感じる。
ほんのひととき握ってから手を離した。
「?今、何をしたんだ?」
「手を動かしてみて下さい。」
言われて動かしてみる。
、、、、、痛みが出ない。
「魔法か?
お前は魔術師なのか?」
「いいえ、違います。
これは手当てです。」
「手当て?
魔法とどう違うんだ?」
「母親が小さい子供の患部に手を当てて、痛みをまぎらわせる方法と同等のものです。
ですから無理はせず、医師に見せて下さい。」
「まぎらわせてる?
これは、そんなレベルの治り方ではないようだが?
まるで完治したようだぞ?」
手首を動かすが、普段と遜色ないようだった。
「完治はしてません。
無理はしないで下さい。」
そう言い、話の続きを遮るように仕事に戻っていった。
不思議な娘だ。
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