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もっと月日が経ち、俺は20歳になった。
俺の誕生日プレゼントを、ひっそりと雅ちゃんは買っていた。
あけのやでお手製のシゲさんの料理を見て、びっくりして喜んでいるところに雅ちゃんの声が聞こえた。
外に出てみると、二つ目の角から俺の名前を呼びながら走ってくる雅ちゃんが見えた。
「けい兄ちゃん!」
雅ちゃんが笑顔で走ってくるのを見て、俺も雅ちゃんの方に走った。
「雅ちゃん!」
一つ目の角に差し掛かった時、俺は猛スピードで来る車に気付いて足を止めた。
「雅ちゃん!来ないで!
来ちゃ駄目だ!」
雅ちゃんは嬉しさが勝り、声が聞こえていないようだった。
笑顔で俺のところに走って来る。
一つ目の角に雅ちゃんも差し掛かった。
猛スピードの車は近くまで来ていた。
気を付けて止まる様子もない車。
俺は雅ちゃんを道路から押し出した。
俺がいきなり押したせいで、雅ちゃんは電信柱の横で尻もちをついた。
それからの記憶はもうない。
痛かった記憶もないし。
それから雅ちゃんがどうしたのかもわからない。
ただ死んでも、雅ちゃんの記憶は消えてはいなかった。
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