1人が本棚に入れています
本棚に追加
下駄箱で靴に履き替え帰ろうとすると、雨は強く降り続いていた。
外に出るとそこに爽子がずっと空を見つめて、降りやまない雨を見ていた。きっと傘がないのだろう。確かに今日は天気予報で雨とは言っていなかったから傘がないのは必然である。
でも真守は傘を持っていた。それは超能力ではない。ただ傘を学校に置きっぱなしにしていただけである。
「よかったら、この傘使って」
「えっ? いいの? 」
「うん、家もそう遠くないから、走って帰るし」
そう話しかけたのは真守ではない。ちょっとチャラそうな茶髪の、現在の前田慶次みたいな同学年の矢島とかいう奴だ。結構女にモテる奴で、真守とは正反対の人間である。
「でも・・・悪いです」
爽子がそう言うと、矢島は、
「い~べぇ。俺は今日、濡れたい気分だから」
そう言って、矢島は爽子に傘を渡して走って行った。
「あ・・・ちょ・・・」
爽子が止めるのも無視して。
爽子は少し困った顔を浮かべた後、傘をさして帰って行った。真守はそんな爽子の背中を見つめる事しかできなかった。
「ダッサー! 」
「しゃがますい! 」
弥羽は真守をバカにしていた。カッコいいとこをモジモジして奪われてしまったからだ。
「じゃあ、今夜は夜の8時ぐらいに米沢駅に行って来たら」
またもそんな事を言いだした。なんでそんな時間に駅に行かないといけないんだと思いつつも、真守は行くことにした。多分爽子がいると思えるからだ。
最初のコメントを投稿しよう!