第五話「告白」

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       *****  はぁ……。  秘書の運転する車の後部座席で、一砥は今日何度目だかしれない溜め息を零した。  花衣と思いが通じ合った後、口では「兄妹でも構わない」と言い切った彼だが、内心では大きな葛藤と迷いがあった。  自分は、構わない。  たとえ花衣が実父の落し胤だったとしても、彼女を思う気持ちには一片の揺らぎもない。  だが相手の立場を思えば、そんな人道に外れた関係に引きずり込むことが、果たして彼女のためになるのか。  それでなくとも母を不幸な事故で亡くし、育ての父をもっと悲しい形で失った過去のある娘だ。  これからは正々堂々と陽の当たる場所で幸福に生きて欲しい、そんな思いがある。  ならば、もしも自分たちが本物の兄妹だと判明した時は、いつか良い男が現れて彼女と結ばれるその日まで、自分はあくまで兄として、彼女を守り支えていくべきではないのか……。  一砥自身、それが人としても彼女を愛する者としても正しい道だと、頭では分かっている。  だがそんな未来を想像しただけで、心が軋み激しく痛んだ。     

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