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「何か、あったか?」
雛菊が注いだ酒を飲み干した仙之助は開口一番、そう言った。
雛菊は、緋色の紅を塗った唇を結んでいたが、先日の正太郎の言葉を思い出し、口を開いた。
「龍を捕まえる、とか言ってましたけど」
真意のわからない言葉であったから、文字通り言った。おそらく正太郎達の間でしか通じない隠語で、言ったところでどの道仙之助には通じないと踏んでいた。
しかし、仙之助は顔色を変えた。
どうやら、今ので仙之助には通じてしまったらしい。
「ありがとう」
仙之助は満面の笑みを見せた。
「身請けの話も、前向きに考えよう」
雛菊は、途端に恐ろしくなった。
自分は取り返しのつかないことをしたのではないかと、言いようのない不安に襲われた。
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