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「存在意義だと?」
「ああ。『人を殺す』という存在意義さ!!」
「まあ、分からなくは無い。俺も最初はそうだったからな」
「最初は・・か。じゃあ、今はどう変わったんだい?」
「どうなんだろうな・・。今もやっている事はほとんど変わらないしな。ただ・・」
「ただ?」
「ただ・・今は・・『守りたい人』がいる」
「ふぅん・・。君の彼女の事か」
「彼女じゃない」
「でも、大切な人なんだろう?」
「そうだ」
「うらやましいね、それは。・・僕にもいたよ。大切な人」
「『いた』?」
「ああ」
へクトルは目を瞑った。
何かを思い出している感じだ。
「じゃあ、今は・・」
「いない。殺されたんだよ。僕の親友に。いや、親友だと思っていた奴に・・ね!!」
「何だと・・?」
「親友に裏切られて大切な人を奪われる気持ちが、君に分かるかい!?あれは地獄だったよ!本当に地獄だった。何せ、僕の目の前で・・」
「へクトル・・」
「いや、もうやめよう。とにかく、僕は力を手に入れた。これでもう、あんな地獄を見るような事は無い」
「・・その力のせいで、お前と同じように、大切な人を殺された人の気持ちを考えた事があるのか?」
「なに?どういう事だい?」
「お前も多くの人を殺してきただろう。だが、その殺された人達を大切に思っていた人もいると言う事だ!」
「はっ!?」
「その大切な人を失って生きている人に対して、お前は一体、どう弁解するつもりだ?!」
「だ・・黙れ!!ならば君だって・・」
「ああそうさ!だから俺は組織を抜けた。その後も、しばらくは殺しをやったが・・。だが関係無い人を殺した事は一度も無い!そして今の俺は、『奪う』ためには絶対に殺しはやらない。『守る』ためだけに殺す。それだけだ!」
「結局、殺す事に何も変わらないじゃないか!君の言っているのはただの綺麗事さ!」
「そうかもな。Bの奴にもそう言われたよ。だが、綺麗事だろうと構わない!俺はもう迷ったりしない!俺の守りたい人の障害になる奴は、全員倒す!」
「そうか。まあ仕方が無いよね。大切な彼女を奪われる所を君に見せられないのは残念だが、一思いにあの世に送ってあげるよ!」
2人とも姿勢を低くした。
へクトルの両側にある、ハルバードとハンドアックスが構えられる。
本当に見えない手があるみたいだ。
ユウはへクトルの所に突っ込んだ。
武器を使わないへクトルが何をするのか、確かめたかったからだ。
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