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絶対に・・ Unforgiven~許さない
久しぶりの依頼だった。
前回の多子の依頼から実に3週間が経った。
それまで一つも依頼が無かった。
それはそれで良い事だろう。
人を始末してほしいという願望が減ったという事だから。
だが、ユウは今回の依頼に胡散臭さを感じていた。
その依頼は、今日の真夜中と呼べる時間に、首都エストにある酒場で会おうという物だった。
オリエンス大陸の首都エスト王国には、新市街と旧市街がある。
新市街は所謂、金持ち連中が住む高級住宅街で、セキュリティも万全だ。
なので、治安も非常に良い。
一方、旧市街は『貧困街』とか、『スラム街』などの呼び名があり、犯罪の温床となっている。
待ち合わせの場所として指定してきた酒場は、旧市街にあるのだ。
そんな所に、しかも真夜中に呼び出すのだから、ただ依頼をするだけという事は絶対に無いだろう。
だがユウは、危険に身を置くという行為自体、嫌いでは無かった。
その方が『生きている』という感覚が味わえるのだから。
ユウは早速、前回とは別の老人の顔に変装して現地に向かった。
約20分歩き、エストの旧市街に到着した。
周りには真夜中だというのに、人で溢れている。
とは言え、人の質が明らかに違う。
まず、目がギラリと光っている。
まるで獲物を狙う獣のようだ。
そして臭い。
ホームレスなど、何日も風呂に入っていないような連中ばかりだ。
こんな所に老人がたった1人で足を踏み入れたらどうなるか・・。
案の定、旧市街を入って間もなく、10人の男に囲まれた。
「よう。爺さんが1人でどこに行こうってんだ?」
リーダーらしき男がにやにや笑いながら尋ねた。
「ここは俺達の縄張りなんだ。通りたければ、有り金全部置いていきな。そうしたら、命だけは、もしかしたら見逃してやるかも知れんぞ」
周りの男達はゲラゲラ笑いだした。
要するに、有り金全部置いていっても、見逃してもらえないかも知れないという訳だ。
どこにでもいるよな。
数を頼りに喧嘩を吹っ掛ける奴。
弱いから自分1人じゃ何もできないくせに、
束になった途端、態度がでかくなる奴が。
そう思いながら、ユウは腰に差した短剣を取り出した。
「・・は容赦しない」
「あん・・?何だって?」
その瞬間、男達は倒れた。
全員息をしていない。
血も全く出ていない。
急所だけを確実に狙ったのだ。
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