絶対に・・ Unforgiven~許さない

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もっともユウは酒が飲めないので、店員が注文を取りに来なかった事をむしろ喜んでいたぐらいではある。 わざわざ酒場に来たのに酒を飲まないなど、おかしい以外の何物でも無い。 「あんたの主はかなり手強いだろうしな。人数は多いに越した事はねえ。だが俺達はラッキーだ。何せ来たのはひ弱な爺さん1人だ。しかもそいつが不可避の暗殺者の秘書と来ている。お前を人質にすれば、普通に戦うよりもずっと楽に奴を始末できる」 男はナイフを取り出し、刃先を舌で舐めた。 「これで懸賞金は俺達の物。そして、不可避の暗殺者を始末した事で、俺達の殺し屋の株も上がるってもんだ」 こういう事もあるかも知れないと思った事はある。 有名になればなるほど、自分の存在が邪魔になる奴もいると言う事だ。 とは言え、今回は完全な誤算だった。 ひ弱な老人の秘書を続けてきたのは、依頼人を油断させる、もしくは安心させるためだったのだ。 実際、今まではそれがうまく作用していたのだ。 だが今回は、ユウが老人の姿だったために、安心して人質に出来ると思われてしまったのだ。 「く・・くくく・・」 ユウは自分の甘さ加減に、思わず笑ってしまった。 「何だ?気でも狂ったか?」 「くく・・。申し訳ありません。自分の馬鹿さ加減に、思わず笑ってしまいました。しかし私を人質に・・ですか・・。そううまく行きますかねえ・・」 「問題ねえよ。ここは地下2階で、他に部屋もねえ。おまけに、このビルはぼろい癖に防音はしっかりしててなあ。大声で叫んでも、この部屋の外には聞こえんぜ」 「助けを呼んでも無駄ですか・・」 「そういうこった。それはすでに実証済みだしな」 ユウは今の言葉にハッとした。 「実証済み・・?まさか・・、女性を・・?」 「その通りよ!今まで何人くらい泣かせたっけなあ・・。こんな汚ねえ旧市街に寄ってくる女はいねえが、新市街には若くてきれいな女がたくさんいるからよお。攫ってきて、皆で楽しませてもらった訳よ。あの叫び声は今でも忘れられねえぜ・・ひひひ・・」 新市街の連続婦女誘拐事件。 ちょうど評議会議員の汚職事件と同時期に起きたセンセーショナルな事件だ。 その女性達の行方は未だ判明していない。 「・・その女性達を、その後どうしたのですか?」
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