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そして、絡めていた腕を外してユウと向かい合った。
「ユウ、どうしたの!?」
「え・・?」
「涙が・・」
「え・・、涙・・?」
ユウが目の下に触れると、手が濡れていた。
自分が泣いている事さえ気づいていなかったのだ。
「本当だ・・」
「一体、どうしたの?」
「済まない、ジニア・・」
「え?え?」
「俺は・・君に、『大切な人』って言われて・・浮かれていたのかもしれない・・」
涙は止まらない。
いや、むしろ溢れだしてきた。
「それに・・俺は・・ずっと・・嫌な記憶を・・忘れようとしてきた・・」
「嫌な記憶って?」
「君を・・殺そうとした・・事さ・・」
「あ・・」
「俺は・・決して・・許されない行為をしたんだ・・!なのに・・君は・・何事も無かったかのように・・優しく振る舞ってくれて・・」
「ユウ・・。でも、どうして急にそんな事を?」
「君と・・2人でいて・・さっきみたいに腕を組んで・・俺・・幸せだと思った・・。だけど・・あの時・・君を殺していたらと思うと・・ふと怖くなったんだ・・」
「ユウ・・」
「ジニア・・君は俺を・・許して・・くれるのか?」
「ふふ・・。馬鹿ね。そんなの当たり前でしょ?」
ジニアがわざと軽い口調で言った。
「私はむしろ感謝してるの。だって、あの事が無ければ、ユウと会えなかったし」
「・・・」
「ユウの弱さと強さも見せてもらったし」
「・・・」
「ユウの本音も聞いた」
「・・・」
「だから私は、今、ここにいるの」
「・・・」
「私の意思で、ここにいるの」
「・・・」
「あなたのそばに・・ね」
「ジニア・・」
ユウは涙を拭いて言った。
「ありがとう」
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