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何でもお見通し Ugly~不快な
この頃運が無い。
もともとUnfortunate(不幸な)人間であるが・・。
前金しか得られなかったり、依頼人が命を狙ってきたので、逆に依頼人の命を奪ったりで、まるで仕事になっていない。
あれから、仕事が無いまま一か月が過ぎた。
何とか、あと3か月ぐらいなら仕事をしなくても生活できるお金は持ち合わせているが、このままだといずれ路頭に迷いかねない。
そろそろ副業の事も考えるべきか?
と、真剣に悩み始めたユウであった。
しかし、暗殺以外、自分に何ができるだろう?
あの組織で得た能力の中に、一般社会で役に立つようなスキルがあるのだろうか。
ユウ自身、自分の能力を完全に把握していない。
今までは強力な敵が現れた訳では無かったので、何とか生き延びて来れたが、そろそろ組織の追手の事も考えた方が良いかも知れない。
なので、今のうちに出来るだけ自分の事を見つめなおした方が良いだろう。
そう決めた瞬間、メールが来た。
ユウはメールを見た。
メールには『今すぐケレト公園に来い』と書かれている。
しかも、目印には黒のサングラスとマスクを指定してきた。
何故2つも?という疑問が浮かんだが、今は久しぶりの依頼に感謝せねばなるまいと思い、またまた別の老人に変装して出発した。
公園に着いた。
ベンチに男が1人座っている。
だがその男は、黒の中折れ帽をかぶり、黒のサングラスと黒のマスクをつけ、さらに俯き加減にしているので顔が全く分からない。
ユウも同じようにサングラスとマスクをしていたが、その男の隣に座ると、サングラスとマスクを取った。
「あなたが依頼人ですか?」
「そうだ」
ユウが質問すると依頼人はそう答えたが、マスクの中にハンカチか何かを入れているようで、声がくぐもって聞こえる。
よほど自分の事を知られたくないのか・・。
ユウは立ち上がった。
「申し訳ありませんが、約束を守れない人の依頼は受けない事にしております」
依頼を受ける条件の1つに、『依頼人は顔を晒す事』というのがある。
これは、依頼人が裏切る事や、嘘を吐く事を未然に防ぐためであるが、もし裏切られたり嘘を吐かれたとしても、迅速に対処できる(始末する)ようにするためでもある。
例え依頼人が変装の名人だとしても、ユウ自身が変装の名人なので立ちどころに見抜く事ができる。
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