何でもお見通し Ugly~不快な

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エスト王と王妃がどこかを視察中、何者かの襲撃を受けて、約100人の供回りを含め全員殺害された。 だが王の一人娘は、エストの王宮に残っていたため無事だった。 そして、王の遺言状で、『自分に何かあった場合の後継者第一位は娘である王女、第二位は弟である伯爵とする』とあり、そのため王女が即位した、というニュースだった。 王女は当時、11歳とか12歳とか言われていたが、実際の年齢は誰も知らなかった。 全くメディアにも姿を現さなかったからだ。 なので、今回即位するために民の前に姿を現した時、皆一様に驚いていた。 まだ幼い子供かと思われていた王女が、実は結構大人びた少女だったのだ。 結局、王と王妃一行を襲撃した犯人は未だに分かっていない。 だが、ユウは知っている。 何故なら、その『襲撃した犯人』が他でも無い・・。 ユウは思考を中断して訊いた。 「何故、彼女を殺さなければならないんだ?」 「この女のせいで、エストの国民が苦しんでいるからだ」 「妙だな。王女の国政はすばらしい物だと聞いているが?」 「表向きはそうだ。国は豊かになり、人々の生活も平穏で幸福だという。だが裏では汚い事をやり、私腹を肥やし続けている」 「証拠は?」 「・・君は評議会議員の汚職事件を知っているかね?あれは、この女が焚き付けた事だ。そして、それと同時期に起きた、新市街の若い女性が連続で誘拐された事件も、この女が裏で糸を引いていた」 「・・何故、そんな事を?」 「あの議員は特に王女に嫌われていたし、誘拐された女達は皆、王女よりも美人だった。だから目障りだったのだろう」 男はそう言うと首を振った。 「おかしいと思わないか?エストの新市街と言えば、セキュリティが万全な事で有名だ。だからこそ、新市街では犯罪が起こっていない。にも関わらず、多くの女が誘拐された。何故だと思う?王女の鶴の一声があったからさ。セキュリティの弱点を、雇った連中に教えたり、女達が慕っている貴族の男の名前を出して、女達を誘い出したりな」 新市街の女性達を誘拐したのは寅達だ。 彼らが王女に雇われていたのだろうか。 だが本人達に訊きたくても、もう訊けない。 死人に口無しだからだ。 「・・だから、その証拠は?」
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