109人が本棚に入れています
本棚に追加
/1044ページ
終わりの始まり Unaccomplished~終わっていない
初日。
ユウは早速、エスト王国にやって来た。
前回の反省を活かし、屈強な男に変装して旧市街に向かった。
特殊メイクで顔に恐ろしく大きな傷なんかを作ってしまったので、怖がって人が寄ってこない。
仕方なく、逃げようとした人間を捕まえては、顔の前でお札をヒラヒラさせた。
旧市街で物を言うのは、やはり金の力だ。
何せ今回は前金がたんまり入ったのだ。
情報のためには、決してお金の出し惜しみはしない。
とは言え、旧市街の人間は王女に近づく事ができないので、『詳しくは知らないが・・』と前置きした上で、『良い評判は聞かない』とか、『姫に雇われている奴がいたらしい』というような、抽象的な情報しか得られなかった。
だが、ある男は読んでいた本を閉じた後で、こんな事を言った。
「国王が健在だった頃は旧市街はまだ治安がましな方だったよ。だが王が死んで王女が即位した後、地獄と化した。どうやら王女は、旧市街を牛耳っている悪い奴らと親しくしているみたいなんだ。実際ここで犯罪が起きたって、王女は何もしてくれないのだからな。つまり仲が良いから、奴らが何をやっても構わないという事なんだろう」
2日目。
他に5~6人、旧市街の人間に当たってみたが、王女の良い噂は全く聞かなかった。
ついでに、王女が親しくしていたらしいという『旧市街を牛耳っている奴』の特徴と、根城にしている場所を訊いたが、徒労に終わった。
何故ならそいつの特徴は、完全に『寅』と一致していたし、場所もあの酒場の事だったからだ。
ちなみに、まだ連中の死体が発見されたというニュースは無い。
死体の処理をどうしたかは、ただ1人、ユウが知るのみだ。
とにかく、旧市街で得られる情報はもう無いだろうと見切りをつけた。
3日目。
新市街で最も有益な情報が得られそうな場所は、ゴシップ好きな中年婦人が集まる井戸端会議のような事をしている場所だろう。
最も、ここには井戸など無い。
何せ高級住宅街だからだ。
貴族の中年婦人が集まりそうな場所・・。
それは、おしゃれなオープンカフェだ。
ユウはそう判断し、ユウ自身も貴族の中年婦人に変装して、近くにあるオープンカフェに立ち寄った。
「それにしても、この脛骨まで覆うようなでかいスカートはどうにかならないのか・・。歩きにくくて仕方が無い・・。女性は大変なんだな・・」
最初のコメントを投稿しよう!