終わりの始まり Unaccomplished~終わっていない

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この服装は、女性に変装して仕立て屋に依頼した物だ。 その時はズボン姿で依頼しに行ったのだが、流石に貴婦人はズボンなぞ穿かない。 こんな風にボヤキながらも、ユウは温かい紅茶を注文した。 ユウにとって貴婦人=優雅=紅茶なのだ。 紅茶を受け取り、ユウは貴婦人達が集まっている所に近づいた。 貴婦人達は、全員が片手にコーヒーカップを持ち、一部の人が、もう片方の手に本を持っている。 優雅に紅茶を飲みながら、本を読みつつ、噂話に花を咲かせているようだ。 さりげなく話を聞いていると、どうやら美形と噂されている貴族の男の話をしているようだった。 紅茶をゆっくり飲みながら、ユウは思った。 『何故、女という人種は、こうもおしゃべりが好きなのか。特に、ゴシップが好きなのは何故なのか?』と。 そんな事を考えていると、ふと話題が変わった。 「そう言えば王女様・・」という声が聞こえた瞬間、ユウはさりげなく婦人達の輪に入った。 婦人の1人がユウに気づいたようだったが、話さえできれば、それが知り合いだろうが誰だろうが関係無いらしい。 「あら、あなたはどなたかしら?」とかいう質問も一切無かった。 「そう言えば王女様だけど、また新しい税金を取るそうよ」 「まあ、何で?」 「何でも王女様の贅沢三昧で、国庫が空っぽになってしまったらしいのよ。それで今回、新しい税金を導入する事に決めたんだって」 「何てこと!それじゃあ、私達の家計がさらに火の車になってしまうわ」 「そうなのよねえ。最近では大臣も、王女様の贅沢三昧にすごく悩んでいらっしゃるみたいよ。でも当の王女様は、国民に恨まれようが妬まれようが知らん顔だから。肝が据わっているというか、図太いというか・・」 「王様がご存命の頃は良かったわよねえ。私達の事を考えてくださって・・」 ユウはこの間、「全くよねえ」とか「そうよねえ」とか適当な相槌を打っていたが、話が一段落すると来た時と同じように、さりげなくその場を後にした。 4日目。 念のため、ユウはあと2か所ほどカフェを回る事にしたが、これまた王女の良い評判は聞かなかった。 その中で、こんな話があった。 「王女はひどく男嫌いで、痴漢やセクハラ、はたまた下着泥棒をした男は裁判にもかけず、即刻打ち首にしているそうよ」 ユウは、寒気を感じた。
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