109人が本棚に入れています
本棚に追加
/1044ページ
この服装は、女性に変装して仕立て屋に依頼した物だ。
その時はズボン姿で依頼しに行ったのだが、流石に貴婦人はズボンなぞ穿かない。
こんな風にボヤキながらも、ユウは温かい紅茶を注文した。
ユウにとって貴婦人=優雅=紅茶なのだ。
紅茶を受け取り、ユウは貴婦人達が集まっている所に近づいた。
貴婦人達は、全員が片手にコーヒーカップを持ち、一部の人が、もう片方の手に本を持っている。
優雅に紅茶を飲みながら、本を読みつつ、噂話に花を咲かせているようだ。
さりげなく話を聞いていると、どうやら美形と噂されている貴族の男の話をしているようだった。
紅茶をゆっくり飲みながら、ユウは思った。
『何故、女という人種は、こうもおしゃべりが好きなのか。特に、ゴシップが好きなのは何故なのか?』と。
そんな事を考えていると、ふと話題が変わった。
「そう言えば王女様・・」という声が聞こえた瞬間、ユウはさりげなく婦人達の輪に入った。
婦人の1人がユウに気づいたようだったが、話さえできれば、それが知り合いだろうが誰だろうが関係無いらしい。
「あら、あなたはどなたかしら?」とかいう質問も一切無かった。
「そう言えば王女様だけど、また新しい税金を取るそうよ」
「まあ、何で?」
「何でも王女様の贅沢三昧で、国庫が空っぽになってしまったらしいのよ。それで今回、新しい税金を導入する事に決めたんだって」
「何てこと!それじゃあ、私達の家計がさらに火の車になってしまうわ」
「そうなのよねえ。最近では大臣も、王女様の贅沢三昧にすごく悩んでいらっしゃるみたいよ。でも当の王女様は、国民に恨まれようが妬まれようが知らん顔だから。肝が据わっているというか、図太いというか・・」
「王様がご存命の頃は良かったわよねえ。私達の事を考えてくださって・・」
ユウはこの間、「全くよねえ」とか「そうよねえ」とか適当な相槌を打っていたが、話が一段落すると来た時と同じように、さりげなくその場を後にした。
4日目。
念のため、ユウはあと2か所ほどカフェを回る事にしたが、これまた王女の良い評判は聞かなかった。
その中で、こんな話があった。
「王女はひどく男嫌いで、痴漢やセクハラ、はたまた下着泥棒をした男は裁判にもかけず、即刻打ち首にしているそうよ」
ユウは、寒気を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!