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「お疲れ~」
「おう」
低い声で、2人のうちの1人が言った。
ユウと同じく兜のせいで顔が良く見えないので、体が非常にでかい事を除けば大した特徴は見当たらない。
この兵士を便宜上、兵士Xと呼ぶ事にする。
まずは挨拶をして、相手の警戒心を無くす事に成功したようだ。
さて、ここからが問題だ。
あまり長々と話をしていられない。
外で気絶している兵士が目を覚ましてしまえば、万事休すだ。
できる限り早く本題に入りたいところだ。
「そう言えば・・」
兵士Xが話し始めた。
「そう言えばお前、外の見張りだろう?何かあったか?」
「え、何で?」
「いや、王宮内は何も無くて暇だったんでな。本でも読まなきゃ、やっていられないぐらいだった。だから外はどうだったかと思ってな」
「ああ、実は・・」
いきなりチャンス到来とばかりに、ユウは話し始めた。
「実は、王宮内に忍び込もうとしている怪しい奴を見かけたんだが、惜しくも逃がしてしまってね。その事を隊長に報告しようと思って。ほら、最近、王女様と怪しい輩が親しくしているって噂を訊いたんで、もしかしたら、そいつらの1人かも知れないしさ。けど、ちょうど休憩時間になったから、報告に行く前に休憩しようと思ってね」
「お前・・」
ユウが兵士Xと話し出した時から本を読み始めたもう1人の兵士が、本から顔を上げて高い声で言った。
本を読んでいても、2人の会話は聞いていたらしい。
こちらも顔がよく見えないので、体が若木のように細長い以外、大した特徴は見当たらない。
この兵士を便宜上、兵士Yと呼ぶ事にする。
兵士Yが続けた。
「お前、それ、隊長に話さない方が良いぜ」
「え、何で?」
兵士Yはきょとんとしたようだ。
「何で・・って、お前、知らないのか?隊長は根っからの王女派なんだぜ?」
「王女派・・って?」
兵士Yと兵士Xはお互いの顔を見交わした。
兵士Yはさらに続けた。
「おいおい・・。お前、もしかして寝ぼけているのか?今、この王宮じゃあ、2つの派閥が争っているんだ。1つは、大臣や王女親衛隊とも呼ばれている、各隊の隊長4名などが属する『王女派』。もう1つが、伯爵の取り巻きの貴族達が属する『伯爵派』だ。この2つの派閥は、王の後継者として相応しいのは王女なのか、はたまた伯爵なのかという事で争っているんだ」
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