終わりの始まり Unaccomplished~終わっていない

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「でも、国王の遺言状で、『後継者は娘の王女とする』と書いてあったんだろう?現に今、国政を行っているのは王女だし・・」 兵士Yはため息を吐いた。 「分かった・・。お前は寝ぼけているんじゃ無いな。記憶喪失なんだ。だから何もかも忘れているんだ。仕方ない。一から教えてやるから、とりあえず座れよ」 そう言うと、兵士Yは椅子に腰かけ、ユウにも正面の席を薦めた。 兵士Xは、そのまま腕を組んで立っている。 言われたままユウが席に座ると、兵士Yが話し始めた。 「お前が言った通り、『王の後継は王女とする』という遺言書があるから、本来、伯爵達が騒ぐのはお門違いだ。ただし・・」 兵士Yはここで言葉を切った。 「ただし、それは王女が、本物の王女だとすればの話だ」 「王女が・・、本物の王女では・・無い?」 ユウは驚きのあまり、言葉がうまく出てこなかった。 「あくまでも噂だがな。王女が偽物だという証拠もあるらしい。ただし、こう言っているのは、伯爵に近い人間ばかりだ。だから、王女を貶めるための罠である可能性も無いとは言えない」 「ふむふむ・・」 「当然、大臣達はそこを追及した。『証拠などお前達が用意した偽物だろう』とな。実際、俺達のような兵士や、伯爵の取り巻き以外の貴族達もそう思っていたよ。ところがだ・・」 兵士Yはここでも言葉を切った。 自分の語りのうまさに完全に酔いしれているようだ。 「ところが、逆に伯爵達が『ならば、DNA鑑定をしてみろ!』って言うと、大臣達は急に黙りこくった。それからさ。王女派と伯爵派の力関係が逆転したのは。それ以来、王女派は悪事のもみ消しに必死になり、王女は王女でおかしな国政ばかりを行うようになった」 「なるほど・・。じゃあ俺が、隊長に外での異変を報告していたら・・」 「そう。王女派である隊長は、事のもみ消しを図っただろう。ただでさえ、王女に対する風当たりが強いのに、また変な奴との関係が明るみに出たら・・。もしかしたら、それを知ったお前が消されたかもしれん」 「ううむ・・」 ユウは思わず唸った。 今回の怪しい人物とは、実はユウ自身の事ではあったが、そんな事は相手に分かる訳が無いのだ。 「そういう訳だから、隊長に報告するのはやめておけ」 「分かった。やめておくよ」 ユウはそう言うと立ち上がった。 「それじゃあ俺、見張りに戻るよ」 「ああ。外の見張り、気をつけてな」
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