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兵士Xが言った。
ユウはこの時、何か言いようの無い違和感を覚えた。
だが、今までの会話の中でおかしい事は何も無かった。
なので、ただの気のせいだろうと思い、休憩室を出た。
最後に王女の姿を一目でも見ておこうと思ったが、王女は玉座から動く気配が無い。
しかも、王女の周りの警戒は非常に厳重で(おそらく暗殺を警戒しているのだろう)、いくら兵士の恰好であっても先ほどの様に全く怪しまれないように済む、という事はまずあり得ない。
ユウは潔く諦める事にした。
「見張り代わってくれて助かった。もう大丈夫だ」
「おう」
見張りを代わってくれた兵士が元の場所に戻って行った。
そして、ユウが見張りに戻ると、早速もう1人の門番が尋ねてきた。
「ずいぶん遅かったな」
「ああ。隊長がなかなか見つからなくてね」
「で、隊長は何て?」
「放っておけ、だとさ」
「放っておけ?」
「ああ。色々忙しいみたいで、そんな小さな事に関わっていられないってさ」
「ふうん、そうなのか・・」
「む!?」
ユウは何かに気づいたふりをした。
「どうした?」
「また、何か物音が・・」
「なに?!どこからだ?」
「あの茂みの付近からだ」
ユウは、兵士が気絶している茂みを指さした。
「よし、また俺が様子をみてこよう」
「ああ、頼む」
ユウはゆっくりと茂みに近づいた。
そして茂みに入ると、すばやく鎧と兜をはずし、元の持ち主に身に着けておいた。
その時、「うう・・」と兵士がうめき声を発した。
それを聞くと、ユウは誰にも見つからぬよう急いでその場を後にした。
とにかく、王女の情報は集めるだけ集めた。
それは依頼人の情報とほぼ一致した。
後は、始末するだけで良い・・。
6日目。
真夜中。
町は一部の場所を除いて寝静まっている。
王宮内も、声一つ聞こえない。
巨大な門を身軽な動きで楽々と超え、その王宮に1つの影が入り込んだ。
外の見張りの兵士は全く気が付かない。
まさにそれは『影』そのものだったからだ。
影は廊下を進んだ。
所々に松明が灯っていたが、見張りの兵士は誰1人、影に気づかなかった。
影はすごいスピードで移動していた。
だから兵士には、影の動きを目で追う事ができなかった。
影は玉座の間の前まで辿り着いた。
その扉の前に4人の男が立っている。
この4人が王女親衛隊なのだろう。
体から立ち上るオーラが他の兵士とは桁違いに強い。
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