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流石に、この4人に気づかれずに玉座の間に入るのは不可能だ。
影は覚悟を決めた。
玉座には、王女が俯きながら座っている。
だが、眠っている訳では無い。
その表情からは、悲しみや苦しみしか見る事ができない。
「何者だ!」
玉座の間の外から声がすると、王女は顔を上げた。
それから、「うわあ!」という叫びが連続で起こった。
そして、すぐに静かになった。
王女は扉を凝視した。
この次にどんな異変が起こるのか、固唾を飲んで見守った。
やがて、扉がゆっくり開いた。
そして、足音だけが近づいてくる。
「誰?誰なの?」
王女は迫りくる恐怖に抗い、ようやく、これだけの言葉を発した。
影はゆっくりと王女に近づいた。
ここもいくらか明かりを落としているが、松明が所々にあるので、完全な闇という訳では無い。
影は王女に近づくにつれて、影では無く、実体のある人間である事が分かってきた。
そして、影からも、王女の表情が少しずつ見えるようになった。
何て悲しそうな・・、苦しそうな表情なんだ・・と、影は思った。
影がふと立ち止まった。
王女との距離は約3メートルと言った所か。
王女は影を見ている。
影も、王女を見つめ返した。
「お初にお目にかかります。王女様」
影、すなわちユウは、王女を見据えてこう言った。
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