何が何やら・・ Unanswerable~答えようのない

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何が何やら・・ Unanswerable~答えようのない

王女は、影の正体が人間であると分かると少し安堵した。 が、全身が黒装束で覆われているのに気が付くと、驚愕した。 「あなたは・・、まさか・・、『最上級の殺し屋』?」 「ほう・・」 ユウは正直に驚きを露にした。 「一国の王女に、その綽名を呼んでいただけるとは光栄ですね」 「それは皮肉のつもりかしら?」 「いいえ、本音ですよ。それにしても・・」 ユウは辺りを見回した。 この玉座の間はかなり広いが、天井の電気は全て消えている。 天井の一部がガラス張りになっていて、そこから入ってくる月明かりの他に今点いている照明と言えば、壁の至る所に取り付けられている松明だが、これは良く見ると松明の形をした、ただの電気だった。 この照明の効果によりユウが想像したのは、予約した高層ビルの最上階のレストランで恋人同士がワイン片手にディナーを楽しんでいる、そんなシーンだった。 「ずいぶんレトロな作りになっているのですね。照明は明らかに現代の物ではありませんし。それに、エスト王国ご自慢のセキュリティを、どうして導入しないのですか?」 王女はにっこり微笑んだ。 「父の遺言よ。『この王宮の景観を無粋な照明で、台無しにしないでくれ』というね。本当は、松明も本物を使用したかったのだけれど、王宮が火事にでもなったら大変でしょ?だから、イミテーションで我慢している訳」 王女は、話している相手が暗殺者でもケロッとしている。 「それと、新市街のセキュリティは、まだ試験的に導入しているだけなの。良く調べると穴だらけだし。機械なんて肝心な時に役に立たないしね。まだ人間の方が信用できるわ」 「・・その人間が、あのザマなのですがね」 「あ・・」 ユウは入り口を振り返って、指さした。 扉は開いたままになっており、その前に4人の王女親衛隊が倒れている。 「・・殺したの?」 「ご心配なく。一時的に眠ってもらっているだけです。私はターゲット以外は手に掛けませんので」 「あら、優しいのね。噂とは大違い」 「ほう、どんな噂ですか?」 「『出会ったら死は免れない』とか、『髪も瞳も着ている物も全て黒いから、闇そのものだ』とか、『通り過ぎた後は、死体の山ができる』とかね」 「ははははは!それは大袈裟すぎますよ」 「噂なんてそんな物よ。色々な尾鰭が勝手にくっついて、話がどんどん大きくなっていくの」 「確かに。あなたの噂もそうですしね」
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