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新たな契約 Unanimity~満場一致
王女は不思議な心地がした。
心の中を温かい物が包み込むような、心の隙間を埋めるような、そんな不思議な感覚に襲われたのだ。
その時、空間が歪み、ユウの姿が現れた。
「君、大丈夫!?」
王女がユウの元に駆けつけてきた。
「ああ。大丈夫だ」
「どこかけがした所は・・無いみたいね」
王女は、ユウの体全体を見てから言った。
「流石は『最上級の殺し屋』ね」
「いや、けがはしてたんだ。両手をね」
ユウはそう言って、両手を広げて見せた。
ヤハウェに受けた傷は完全に塞がっている。
「一体、どういう事なの?」
「戦いに勝利して、あの空間から出てきた時に、傷が全快する仕組みになっているようだ。どういう仕組みか分からないけどね」
そこで、ユウはどんな戦いだったかを事細かに説明した。
それを聞くと、王女はユウの手の平をまじまじと見た。
「ふうん・・。骨まで見えるほどの傷が一瞬で塞がる・・か」
「言ってみれば、勝者へのご褒美みたいな物だろうか・・。どんな致命傷を受けていようと、相手が死ぬまで自分が生きていたら、全快して元の世界に戻る事ができる。ただし、相打ちの場合は、どちらも戻る事が出来ないみたいだ」
「そうなんだ・・。それにしても、ヤハウェって奴がヨーヨーになるなんて。それで2人しか入れない空間にもう1人入るって反則じゃない?」
「そうでも無いさ。ヨーヨーから元の姿に戻ったらその瞬間に消去されてしまうからな。だからこそ、クセノフォンをぐるぐる巻きにした時、ヤハウェは元の姿に戻れなかったんだ」
「そっか。確かにそうだね」
「あ・・!」
ユウは突然何かに気づいて、いきなり右膝をついて、王女に拝礼した。
「数々のご無礼、どうかお許しください」
「え?えええ??どうしたの急に?」
「私は、あなたが偽物の王女と知るや否や汚い言葉遣いをしてしまいました。本来、私は、生まれや境遇などで人を差別しない主義なのですが、王女のふりをして、あくどい事ばかりしていたと思ったら・・つい・・」
ユウは顔を上げた。
「ですが、先ほど『あなたはまだ負けてない』という励ましのお言葉をいただいた時、私は、あなたこそは女神・・いや、王女にふさわしいと心から思いました」
王女はそれを聞くと微笑んだ。
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