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嘘を憎んで人を憎まず Underemployment~不完全雇用
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今日も殺しの依頼があった。
場所など、特に指定は無い。
ただ、『今日なるべく早く会いたい』との事だったので、『今から約2時間後に、ケレト公園の砂場前のベンチで待ち合わせでどうだ』と返事をした。
すると、『それで良い』という事だったので、『目印を黒いハンカチにする』とメールを返した。
この世界は主に5つの大陸で成り立っている。
世界の中心に位置する『セントラル大陸』
その北に『ノール大陸』
東に『オリエンス大陸』
西に『ガルブ大陸』
南に『シュッド大陸』である。
ユウが住んでいる所は、オリエンス大陸にある『ケレト』という小さな町である。
オリエンス大陸は三日月の形をしており、ケレトはその最北端にある。
南に20分くらい歩くと、首都の『エスト王国』にたどり着く。
そのケレトに唯一ある公園が、『ケレト公園』なのだ。
ケレト公園はアスレチック広場や、ジョギングコースもある大きな公園なのだが、何故か一ヶ所だけ、ベンチと砂場とジャングルジムしか無い寂しい一角がある。
どうやら当初は、ここを壊して新しく何かの建物を建設する計画があったのだが、その計画がおじゃんになり、ほったらかしにされている状態であるらしいのだ。
ここを待ち合わせ場所に利用するのは、障害物が何も無いので他の人間が隠れたり、会話を盗み聞きされる心配が全く無いからだ。
目的地にたどり着いた。
ユウは、黒いスーツを着た老人の姿に変装していた。
この老人は『ユウの秘書』という事にしている。
ベンチに女が1人座っているだけで、他には誰もいない。
女は20代後半くらいでやや切れ長の目をしており、髪の色は青色で長さはセミロング。
十分美人の部類に入る。
女は黒いハンカチを持っていた。
やはり、この女が今回の依頼人だ。
ユウも黒いハンカチを見せながら、女の隣に腰かけた。
「あなたが依頼人ですかな」
「ええ、そうよ」
お互いの顔を見ないで2人は会話を始めた。
傍から見れば、「良い天気ですな」「そうね」とか言った、日常会話を話しているようにしか見えない。
「あなたが始末屋なの?」
「いえ、私は秘書でございます」
「こっちは素顔をさらけ出しているのに、本人が来ないなんて、不公平じゃ無いの?」
「いえいえ。こちらは本人が伺うとは、一言も申しておりませんので・・」
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