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ほのかな恋心 Unadulterated~純粋な
「王女様が・・殺された時」
「そうだ・・」
ジニアは背筋を伸ばした。
「じゃあ、その話をお願いね」
「分かった」
ユウは一度深呼吸をした。
「暗殺者になった俺は、いくつかの依頼をこなしていった。それは全て2人か3人で組んでやったよ。そしてある日、初めて1人での暗殺を任された。それが『エスト王の暗殺』だった」
「うん・・」
「エスト王は約1週間、ミズラフの町のアナトレー卿の屋敷に滞在する予定だと言う事だった。そしてその間に、エスト王の暗殺をしろとの事だったよ」
「アナトレー卿?」
「ミズラフの町を見た時、広い空き地があっただろ?あそこに以前は、アナトレー卿が住む広大な屋敷があったんだ」
「そうなんだ」
「依頼を受けた俺は張り切っていた。何せ、1人でこなす初めての依頼だったからな。失敗は許されない。だからまず俺は、あの大きな木の所から町の全景を見渡した」
ユウは目を瞑った。まるで、当時の事を思い出しているようだ。
「色々な考えが頭をよぎったよ。そして、ああでもない、こうでもないと考えている時だった。1人の少女が俺の視界に入って来た」
「それが・・、王女様?」
「そうだ・・」
少女の髪は明るい紫色だった。
そして、透き通るようなきれいな桃色の瞳だった。
そう・・。
君と同じような・・ね。
その少女は俺の姿を見ると、ゆっくり近づいて来た。
俺に興味を持ったみたいだったよ・・。
「お兄・・ちゃん・・誰?ここで・・何・・してるの?」
「お兄ちゃん?俺は君のお兄ちゃんじゃないぞ」
「えっ?!そ・・そんな事・・分かってるよぉ・・。変なお兄ちゃんだなぁ・・」
「変で悪かったな」
「あっ!ご・・ごめんなさい」
その子はペコリと頭を下げた。
「まあ、正直なのは良い事だ。それで?俺に何か用か?」
「え?ええと・・。な・・何をしてるのかなぁって思って・・」
「ここから景色を見てる」
「景色?」
その子は町の方を見た。
そして、俺に視線を戻して言った。
「それって・・、おもしろいの?」
「まあ、俺にとってはおもしろいな」
「そうなんだ・・。じゃあ、あたしも一緒に見て良~い?」
「何故だ?」
「え・・えっと、お・・おもしろそうだから・・」
「好きにしろ」
「あ・・ありがとう」
その子は俺の隣に腰を下ろして景色を見た。
だが、すぐに我慢できなくなったみたいだ。
「・・全然、おもしろくない」
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