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次の日の朝、俺はアナトレー家の使用人になるべく20代の青年に変装した。
内部事情を調べるためだ。
使用人には簡単に採用された。
広い屋敷だったし、使用人がちょうど不足していたんだ。
昼の休憩時間に俺が木の所に向かうと、すでに少女がいた。
当然、変装は解いて行ったぞ。
「お兄ちゃん、遅~い!遅刻だよ遅刻!!遅刻厳禁って言ったの、お兄ちゃんでしょ?」
「俺は『君が遅刻厳禁だ』と言っただけで、『俺が遅刻しない』とは言ってないぞ?」
「わあああ!!ずるいんだお兄ちゃんって!ずるいずるい!!」
これには俺も苦笑してしまったよ。
そして、俺はその子の隣に腰を下ろしながら言った。
「はは!悪かったよ。だが、俺は嘘は言って無いぞ」
「うう・・。まあ確かにそうだけどさ」
「で?今日は何して遊ぶんだ?」
「えっとね。家からトランプ持ってきたんだ!!」
「トランプか。良いね」
「でしょ?やろうやろう!!」
その日はババ抜きをやったんだが、3回やって3回とも負けてしまった・・。
嘘が嫌いなのがアダとなってしまったよ・・。
それにしても、子供の適応能力には恐れ入る。
たった一日一緒にいただけで、もう俺に対して遠慮も何も無くなっているのだからな。
それはそれで、俺は嫌いじゃ無かったが・・。
「おっと、そろそろか」
「え、今日はもう行っちゃうの?」
「ああ。何せ、仕事の休憩時間中に出て来たからな」
「あ・・、そ・・それでお兄ちゃん、遅れて・・」
その子はしょんぼりした。
「ご・・ごめんなさい・・。あたし、何も知らなかったから・・」
不思議な子だった。
幼いと思ったら急に大人びて・・。
俺は、その子の頭をポンポンっと優しく叩いてやった。
「気にするな。君にそんな顔をされると俺も調子が狂う。いつも通り笑ってくれてた方が良い」
「えへへ・・。お兄ちゃんがそう言うなら、そうするね!」
「それで良い。それじゃあな」
「あ、お・・お兄ちゃん!」
「何だ?」
丘を下りて行こうとした俺をその子が止めた。
「きょ・・今日もとっても楽しかった!!あ・・明日も遊んでくれる・・?」
「言ったろ?3、4日はいるって。こっちにいる間は、いつでも遊んでやるよ」
「や・・やったあ!ありがとうお兄ちゃん!!」
「別に構わん」
「ババ抜きはお兄ちゃん弱いから、別の遊び考えるよ」
その時、俺の心臓に鋭いナイフが突き刺さった!!
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