ほのかな恋心 Unadulterated~純粋な

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子供は時に残酷だ・・。 俺は心臓を押さえながら言った。 「ぐ・・う・・。ま・・まあそうしてくれ」 「分かった!バイバイお兄ちゃーーん!!」 いや、変わっていったのは、何もその子だけじゃない・・。 俺の方も、少しずつ心がほぐれていくのを感じた・・。 その日は仕事をしながら、他の使用人から情報を集めた。 どうやら王は視察では無くて、アナトレー卿に何かを頼みに来たようだ。 あと、王には娘が1人いるが、やんちゃになりつつあるとの事。 ただ、ここに来てからは知り合いもいないので寂しそうだったらしい。 それがどこかに行って戻ってきたと思うと、急に元気になって言葉遣いもえらく汚くなったそうだ。 どうやら、王女が何者かと遊んでいるらしい。 王女の言葉遣いが汚くなっているのは、そいつの仕業だとか。 誰だか知らないが、罪作りな奴もいたものだ。 残念ながら、その王女とは会えなかった。 広い屋敷だ。 仕方ない。 俺は他の使用人とは違い、通いで来ている。 それには、ある目的があった。 仕事帰りに、俺に声をかけて来た兵士に酒を驕り、親しくなるためだ。 俺がアナトレー家の使用人だと知っている奴の方が、親しくなりやすいからな。 俺はおそらく未成年(俺は自分の歳が分からないのでな)だから、当然酒など飲まなかった。 まあ、年を取っても酒など飲む事は無いだろうが・・。 もし、誰も声をかけて来なければ、自分から声をかけるつもりだった。 だが、ちょうどうまい具合に、「あれ?お前って、確か・・」と言って来た兵士がいた。 だから俺は、「どうです大将、一緒に飲みませんか?」と誘った。 それにしても、兵士の中にも不真面目な奴はいるものだ。 『パトロールなんて糞くらえだ!』って言うぐらいだからな。 しかもパトロール中にも関わらず俺と酒を飲んでいる(さっきも言ったが俺は飲んでないぞ)。 まあ、誘ったのは俺の方だが・・。 その日は特に有益な情報は無かったが、顔合わせが出来ただけで良しとしよう。 3日目。 今日からは仕事をしながら、王の動きをなるべくチェックする事にした。 もしかすると、毎日決まった動きがあるかも知れないからだ。 そして休憩時。 大きな木の所に行くと、相変わらず元気な少女の姿が、俺の瞳の中に入って来た。 「お兄ちゃん!お兄ちゃーーん!!早く早く!!!」 全く・・。 本当に元気な子だ。
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