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「やっほー!お兄ちゃん!!」
見慣れた景色だ。
良く良く考えると、2日目以降、俺も遅刻はしていない。
にも拘わらず、少女はすでに大きな木の下にいた。
俺と遊ぶのが、そんなに楽しみなのか・・。
それを思うと、もうすぐ会えなくなるのが何とも心苦しい。
俺はその子の隣に行くと言った。
「今日は、少し出かけないか?」
「え、出かける?どこに?」
「近くの森さ。たまには自然と戯れるのも良いかと思ってね」
「うん!お兄ちゃんとならどこまでも・・あ!」
その子は口元を両手で押さえると、急に顔が真っ赤になった。
「どうした、顔が赤いぞ?熱でもあるんじゃないのか?」
「だ・・大丈夫!何でも無いから!!」
「そうか」
「うん!大丈夫!!行こ、お兄ちゃん」
俺達は近くの森に行く事にした。
その子は、虫とかも特に怖がらなかった。
けど、多くの鳥や虫の鳴き声を聞いて驚いていた。
『自然と戯れる』事自体、まるで無かったかのように見える。
それだけじゃ退屈かもしれないと思い、かくれんぼや鬼ごっこもやった。
もっとも、かくれんぼも鬼ごっこも俺の得意分野だ。
その子は、かくれんぼで俺を見つけられなかったし、鬼ごっこで俺に追いつく事も出来なかった。
「ああ~・・もう~・・疲れた~!!」
その子が叫んだ。
キレイな服が結構汚れてしまっていた。
もしかしたら親に怒られるかもしれない・・。
もしそうなら、謝る。
好きなだけ、俺を殴ってくれ。
「たまには運動も良いだろ?」
「うん!疲れたけど・・楽しかった!!」
「じゃあ、そろそろ行くか」
「あ・・」
「どうした?」
その子は下を向いて佇んでいる。
「あ・・あの・・、あの大きな木の所まで、手・・手を・・」
「手?」
「手を・・繋いで・・欲しい・・」
「ん?ああ、別に構わないよ」
俺はその子の手を握ってやった。
「もう・・。そんな簡単に・・」
「何だって?」
「何でも無い!!」
そう言うと、その子は俺の手を握り返した。
ちょっと、痛かった・・。
この日、使用人の1人が王女を尾行したようだ。
日に日に元気になっていくのは良いが、やんちゃな性格がさらに増して行ったので、王妃が心配して頼んだらしい。
もしかしたら、怪しい連中と付き合っているのでは無いか・・?
伯爵の件もあるし、王妃がそう思っても不思議じゃない。
だが、王女は素早い動きで、立ちどころに尾行を撒いてしまったようだ。
やるな王女。
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