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一度俺の組織にスカウトしてみるか。
王の動きをチェックすると、昨日と同じ時間に、1人で自分の部屋に籠っていた。
やはり、暗殺するならここしかない。
その事を帰り際に(昨日忘れたから今度こそ)、いつもの兵士に酒を薦めながら訊くと(当然俺は・・以下略)、『アナトレー卿の弟から来た、伯爵の身辺調査の結果を読んでいるのだろう』という事だった。
どうして部屋に籠って1人で見ているのかと言うと、『調査結果を見ている自分の顔を、誰にも見られたく無いからだろう』と言う事だった。
血を分けた弟が悪事に加担しているかも知れない。
そんな調査を、兄である国王はどんな気持ちで見ているのだろうか?
親も兄弟もいない俺に、そんな事が分かるはずも無い。
5日目。
今日も同じ時間に王が1人で部屋に閉じこもっているようなら、今日、暗殺を実行しよう・・と思ったが、昨日の侵入者のせいで警備が厳重になってしまったので、もう一度、国王が部屋に籠っている時の、警備の場所と人数をチェックしなければならなくなった。
どのみち、どういう結果であろうと、明日には暗殺を実行しようとしていたのだ。
国王達がいきなり帰る、なんて事にもなりかねないからだ。
ちなみに、今日の尾行もまた王女に撒かれたらしい。
使用人達は、昨日の王女は、帰ってきたら服が汚れてて大変だったらしいが、今日の王女は、かなりおめかししていたとか、恰好も、いつもよりキレイな恰好だったとか、覚悟の表情をしていたとかで、昨日よりも別の意味で大変な事になっているとか、訳の分からない事を言っていたな。
「あ・・」
「ん?」
いつも通り、大きな木の所に少女が立っていた。
だけど、何だか元気が無い。
いつもみたいに『お兄ちゃーん!』とか言わなかったし。
俺はその子に近づくと言った。
「どうした?元気が無いぞ?」
「あ・・あの・・」
「ん?」
「わ・・わたくし・・」
「は?」
わたくし?
そんなキレイな言葉、今まで使ってたか?
「一体どうしたんだ?その口調?」
「あ・・こ・・この口調は・・緊張すると・・こうなってしまうのです・・」
どうやら緊張しているらしい。
何故だ?
「お気に・・障ったのでしたら、謝ります・・。申し訳ございません・・」
「ああ?いや、まあ別に変じゃ無いし、良いんじゃないか?そっちの方がキレイな言葉遣いだし」
その子の表情がパッと明るくなった。
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