ほのかな恋心 Unadulterated~純粋な

8/10
前へ
/1044ページ
次へ
一度俺の組織にスカウトしてみるか。 王の動きをチェックすると、昨日と同じ時間に、1人で自分の部屋に籠っていた。 やはり、暗殺するならここしかない。 その事を帰り際に(昨日忘れたから今度こそ)、いつもの兵士に酒を薦めながら訊くと(当然俺は・・以下略)、『アナトレー卿の弟から来た、伯爵の身辺調査の結果を読んでいるのだろう』という事だった。 どうして部屋に籠って1人で見ているのかと言うと、『調査結果を見ている自分の顔を、誰にも見られたく無いからだろう』と言う事だった。 血を分けた弟が悪事に加担しているかも知れない。 そんな調査を、兄である国王はどんな気持ちで見ているのだろうか? 親も兄弟もいない俺に、そんな事が分かるはずも無い。 5日目。 今日も同じ時間に王が1人で部屋に閉じこもっているようなら、今日、暗殺を実行しよう・・と思ったが、昨日の侵入者のせいで警備が厳重になってしまったので、もう一度、国王が部屋に籠っている時の、警備の場所と人数をチェックしなければならなくなった。 どのみち、どういう結果であろうと、明日には暗殺を実行しようとしていたのだ。 国王達がいきなり帰る、なんて事にもなりかねないからだ。 ちなみに、今日の尾行もまた王女に撒かれたらしい。 使用人達は、昨日の王女は、帰ってきたら服が汚れてて大変だったらしいが、今日の王女は、かなりおめかししていたとか、恰好も、いつもよりキレイな恰好だったとか、覚悟の表情をしていたとかで、昨日よりも別の意味で大変な事になっているとか、訳の分からない事を言っていたな。 「あ・・」 「ん?」 いつも通り、大きな木の所に少女が立っていた。 だけど、何だか元気が無い。 いつもみたいに『お兄ちゃーん!』とか言わなかったし。 俺はその子に近づくと言った。 「どうした?元気が無いぞ?」 「あ・・あの・・」 「ん?」 「わ・・わたくし・・」 「は?」 わたくし? そんなキレイな言葉、今まで使ってたか? 「一体どうしたんだ?その口調?」 「あ・・こ・・この口調は・・緊張すると・・こうなってしまうのです・・」 どうやら緊張しているらしい。 何故だ? 「お気に・・障ったのでしたら、謝ります・・。申し訳ございません・・」 「ああ?いや、まあ別に変じゃ無いし、良いんじゃないか?そっちの方がキレイな言葉遣いだし」 その子の表情がパッと明るくなった。
/1044ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加