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悔しい。ただ、それだけ Unaccommodating~助けにならない
その日は、いつも泊っているホテルでは無く、大きな木の近くで野営する事にした。
そこは大きな木を中心にすると、町とは反対方向にある場所だった。
ここは高い草木に囲まれているので、人に見られるような場所ではない。
明日の準備をするために、ここにいるのだ。
それは、人に見られたくないような事なのだ。
ホテルの自分の部屋でも他人に見られないんだから、ホテルでやれば良いじゃないか、という突っ込みは無しだ。
ホテルで出来ないから外でやるんだ。
それに、この場所だと、大きな木がすぐ目の前にあるようなものなんだ。
最後の日くらい、少女よりも早くあの木の下に行って、驚かせてやりたいだろう?
返事は全く考えていなかったが・・。
辺りはすっかり暗くなっていた。
その時、近くの茂みが動く音がした。
「誰だ!」
「ふん・・。流石にするどいな」
茂みから男が1人出て来た。
橙色の髪で、目つきが嫌な男だ。
組織の仲間の1人、『B』だった。
Bが、爆弾攻撃(Bomb)を得意としている事は、すでにチェック済みだ。
「Bか・・。どうした?何故こんな所にいる?」
「そろそろ王の暗殺をするんだろ?」
「ああ。明日決行する」
「はは!大将の言った通りだぜ!!」
Bが言う『大将』とは、組織を運営している男の事だ。
他には、
『リーダー』
『首領』
『ボス』
『あの方』
など、色々な呼び方をされている。
「あの男が何て言ってたんだ?」
「『お前は慎重な奴だから、これなら確実に暗殺できる!と思える情報が無い限り、絶対に行動は起こさない』と言ってたぜ」
「まるで、俺がその『これなら確実に暗殺できる!』と思える情報を手に入れたのを知っているかのような言い方だな」
「ああ。何せ、スパイを潜り込ませたからな」
「やはり、昨日の侵入者は組織の・・。じゃあ捕まったのは、わざとだったって事か?」
「その通り!あの警備の人数だ。見つかるに決まっている。だったら必死に抵抗したふりをして捕まり、連中が油断している所を狙って逃げる。連中が一番油断するのは、捕らえて護送している時だ。何故なら、犯人は捕まるまで散々抵抗したんだ。それでも逃げられなかったのなら、もう観念して何もしないと思っても不思議はねえ」
「だが、何故だ?何故スパイを」
「お前がちゃんと仕事をしてるかどうか確認しろって、大将に言われてな」
「ち・・。俺も信用無いな・・」
「まあ、そう言うなよ」
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