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「だから王女様も最初しゃべりにくそうだったのよ。どういう言葉遣いをしようか迷ったのね。でも、途中からは普通に会話してた。だから、この言葉遣いで良いんだって思ったのね。自分が憧れてた、ラフな言葉遣いに」
「憧れてた?」
「私も、王女を少しの間だけどやったから分かるの。キレイな言葉遣いをすると肩がこるのよ。だから、国の業務をこなす時も、ラフな言葉を使えたらって思った事もあったわ」
「それ、憧れてたって言えるのか?」
「まあその、私は本物の王女じゃないから、もともとはラフな言葉遣いをしてたし・・。けど王女様は違う。物心ついた時から、ずっとその言葉遣いで通してきたはず。両親に厳しく躾けられただろうしね。で、何かの折に、普段私たちが使っている言葉遣いを耳にする。そしてこう思う。『私も、ああいう言葉を使って皆と気楽に話がしたい』って。どう?これなら納得してもらえるかしら?」
「納得だな」
「良かった。あと急に告白した理由か。それは多分、尾行のせいかな?」
「尾行?何故尾行が?」
「尾行を撒いたのだから、王女様は当然、尾行に気づいたでしょう。そしてその尾行は王様か王妃様が依頼したのだと、当然王女様も考えたでしょうね」
「まあ実際、王妃が頼んだそうだしな」
「それで王女様は考えた。『このままだといずれ屋敷に監禁されるなり、監視されるなりして、ユウに会う事が出来なくなる』って」
「ふむ・・」
「だから王女様は初めて尾行された日に焦ったのよ。『お兄ちゃんとならどこまでも』って言った時に、口を押えて顔が真っ赤になったじゃない?」
「ああ。それが?」
「つい口が滑ったのよ。『どこまでも行く』って事は、その人と『一生添い遂げる』と同義だもの」
「そうなのか?」
「良く言うじゃない。男性が女性にプロポーズする時に、『一緒の墓に入ろう』って。それと同じ事よ」
「・・古いな」
「もう!揚げ足を取らないでよ!」
「・・悪い」
「と・・とにかく!その日に『手を繋いで欲しい』とも言ったじゃない?それはやっぱり、いきなり告白する勇気は無かったから、まずは告白するためのプロセスを作ろうとしたんじゃないかな?」
「なるほど・・良く分かったよ」
ユウは下を向いた。
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