悔しい。ただ、それだけ Unaccommodating~助けにならない

6/7
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/1044ページ
「だから王女様も最初しゃべりにくそうだったのよ。どういう言葉遣いをしようか迷ったのね。でも、途中からは普通に会話してた。だから、この言葉遣いで良いんだって思ったのね。自分が憧れてた、ラフな言葉遣いに」 「憧れてた?」 「私も、王女を少しの間だけどやったから分かるの。キレイな言葉遣いをすると肩がこるのよ。だから、国の業務をこなす時も、ラフな言葉を使えたらって思った事もあったわ」 「それ、憧れてたって言えるのか?」 「まあその、私は本物の王女じゃないから、もともとはラフな言葉遣いをしてたし・・。けど王女様は違う。物心ついた時から、ずっとその言葉遣いで通してきたはず。両親に厳しく躾けられただろうしね。で、何かの折に、普段私たちが使っている言葉遣いを耳にする。そしてこう思う。『私も、ああいう言葉を使って皆と気楽に話がしたい』って。どう?これなら納得してもらえるかしら?」 「納得だな」 「良かった。あと急に告白した理由か。それは多分、尾行のせいかな?」 「尾行?何故尾行が?」 「尾行を撒いたのだから、王女様は当然、尾行に気づいたでしょう。そしてその尾行は王様か王妃様が依頼したのだと、当然王女様も考えたでしょうね」 「まあ実際、王妃が頼んだそうだしな」 「それで王女様は考えた。『このままだといずれ屋敷に監禁されるなり、監視されるなりして、ユウに会う事が出来なくなる』って」 「ふむ・・」 「だから王女様は初めて尾行された日に焦ったのよ。『お兄ちゃんとならどこまでも』って言った時に、口を押えて顔が真っ赤になったじゃない?」 「ああ。それが?」 「つい口が滑ったのよ。『どこまでも行く』って事は、その人と『一生添い遂げる』と同義だもの」 「そうなのか?」 「良く言うじゃない。男性が女性にプロポーズする時に、『一緒の墓に入ろう』って。それと同じ事よ」 「・・古いな」 「もう!揚げ足を取らないでよ!」 「・・悪い」 「と・・とにかく!その日に『手を繋いで欲しい』とも言ったじゃない?それはやっぱり、いきなり告白する勇気は無かったから、まずは告白するためのプロセスを作ろうとしたんじゃないかな?」 「なるほど・・良く分かったよ」 ユウは下を向いた。
/1044ページ

最初のコメントを投稿しよう!