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「まあ、僕は君の事、あまり知らないんだけどねぇ・・」
「俺もお前の事はあまり知らないな。Hよ」
「Hなんて言われると気分悪いなぁ。僕の名前は『ヘクトル』。覚えておいてよ」
「そして私は『アキレス』だ。改めてよろしく、ユウ君」
「『アキレス』と『ヘクトル』だって!?・・名前を付けた奴は悪趣味だな」
「何故だい?」
へクトルが尋ねた。
「『アキレス』も『へクトル』もトロイア戦争の英雄だ。しかも『へクトル』を殺したのは『アキレス』なんだぞ?にも拘わらず、その名前を付けた2人を一緒に行動させているんだ。悪趣味以外の何物でも無い」
「何だ、知ってたんだ。なかなかやるねぇ」
へクトルがまた髪をかきあげた。
「でも僕は感謝しているよ?だってそのおかげで、こんなすごい人とコンビを組めているんだからねぇ」
「どういう事だ?」
「まだ気づかないのかい?僕らどうして、こんなにゆっくり会話していられるのかな?」
その瞬間、ユウはハッとした。
周りには大勢、下級暗殺者がいる。
下級暗殺者は身体全体が真っ白なので、暗闇の中で不気味に浮かんでいるように見える。
怪しく光る赤い目が、さらに不気味さを際立たせている。
そして、下級暗殺者はターゲットであるユウをすでに確認している。
にも拘わらず、何故襲ってこないのだ?
「ま・・まさか・・アキレスが・・?」
「その通り!すごいよね彼。こんなに多くの下級暗殺者に対する命令を、一瞬で無効にできるのだから。『Avoidance』(無効)って、能力らしいよ」
「だが、何故そんな事を?」
「君としゃべっている間は、機械人形に攻撃して欲しくないんだってさ!紳士だよねぇ」
「どうして・・」
「どうしてそんな事が分かるかって?そりゃ分かるさ。何せ僕らはコンビなんだから」
またへクトルが髪をかき上げた。
「そして無効にした命令をたった一言で、元通りに『Adapt』(順応させる)事が出来るんだ・・」
「・・行け」
アキレスが一言呟くと、下級暗殺者達が動き出した。
だが、下級暗殺者達はユウの方には来なかった。
何故なら・・。
「狙いはジニアか!?」
何が紳士だ!
ふざけやがって!!
ユウは慌てて、ジニアのいる部屋に向かう下級暗殺者達を次々になぎ倒していった。
だが、数が多すぎた。
「しまった!一体逃がした!!」
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