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「『Handsfree』(手を使わずに操作できる)。僕の能力さ。言葉通り手を使わずに武器を使う事ができる。まぁ簡単に言えば、僕の腕と同じ長さの見えない腕が2本、僕の体のどこかから出ていると言う訳さ」
「・・気持ち悪いな」
「まあ、そう言うなよ。だからこそ、こんな事も出来るんだ」
へクトルがハルバードを自分の左の方に放った。
すると、ハルバードがへクトルの左で浮いているみたいになった。
今、へクトルの左にハルバード。
そして右に、先ほどユウの肩を切り裂いた『Hand ax』(ハンドアックス)がある。
「そして、持つ物が無くなった僕は何をするかと言うと・・」
そう言って、へクトルは髪をかき上げた。
「・・便利だな」
「あははは!!そうだろう?やっぱりそう思うよねぇ」
「何故、最初からそうしなかったんだ?」
「・・一度、君と武器を交えてみたかったんだ」
「何のために?」
「武器を交えれば、その相手の心の内が分かるんだ。良くあるのは『剣を交える』事だけど、僕は剣が使えないからね。だからハルバードにした」
「心の内が分かる?俺の心の・・か?そんな物知ってどうするつもりだったんだ?」
「別にどうするつもりも無かったけど、組織を抜けた人の心の内を知りたかったってだけさ」
「それで?分かったのか?」
「うん。『何の迷いも無い』って言うのが分かったよ」
「それはお前にとっては、どんな結果だったんだ?」
「意外だった。そして、こんなに迷いの無い人が、組織を抜けたのも意外だった」
「それの何が意外なんだ?」
「普通、何かを途中でやめる人って言うのは、そのやってる事に迷いが生じたからやめるんじゃないかな?」
「そうだな」
「けど君にはそれが一切無かった。本当に心の中が透き通っているみたいだった。曇り一つ無いんだからね。それは何故なんだい?」
「知るか。無茶苦茶な組織を抜けられたからじゃ無いのか?」
「ああそうか。組織を抜けたから心に迷いが無くなったって訳か。では、組織を抜ける前は迷いがあったって事だね」
「そうかもな。迷いというか、納得いかない事があったから組織を抜けた訳だが」
「ふぅむ・・。やっぱり君は危険な存在だね」
「危険だと?」
「ああ。この組織を潰しかねない、危険な存在だ。それは同時に、僕にとっても危険という事になる」
「何故だ?」
「僕はこの組織に感謝しているんだ。僕に存在意義をくれたんだからね」
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