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「あなたにそう言っていただいて、私も嬉しく思います。ですが、このような事になったのは、私が偽物の王女だからでは無く、単に、私の力が至らなかったからです。私の力が至らなかったために、国民は私に不信感を抱き、あのような策略に協力してしまったのでは無いでしょうか。私は今一度、国民の代表たる者の有り様を考えなければなりません」
「・・・」
「・・ぷ」
2人は同時に笑い始めた。
「やはり駄目だ。こんな堅苦しい言葉遣い、俺達には似合わないよ」
「ふふ、そうね。私もそう思った」
「けどな・・」
ユウは立ち上がって言った。
「けど、さっき俺が言った言葉は全部本当の事だぞ。俺は嘘は嫌いなんだ。嘘を吐く事も、吐かれる事も」
「うん。分かる気がする」
「・・という事で、改めてよろしく。王女様」
「もう・・。『王女様』はやめてよ。出来れば、名前で呼んでほしいな」
「名前・・?」
ユウは腕を組んで考えた。
「名前、教えてもらったっけ?」
「あ!そう言えば、まだ言ってない。君の名前も訊いてない」
「そうだったか・・。うっかりしていたな。じゃあ俺から改めて自己紹介を。俺の名は『ユウ』だ。よろしく」
「私は『ジニア』。こちらこそよろしくね、ユウ」
2人は握手を交わした。
「ところで、ユウ」
「何だ?」
「もうこうなってしまった以上、私はここにはいられない。だって、私が偽物の王女だって事、大分知れ渡っているみたいだから・・」
「そう・・だな」
「それで、あなたにお願いがあるの。私を、ノール大陸の首都、『ノルデン』まで連れて行って欲しいの」
『ノール大陸』とは、世界の中心に位置する、『セントラル大陸』の北にある大陸だ。
今、ユウ達がいる『オリエンス大陸』からは、北西に位置する。
ノール大陸の首都ノルデンは、工業が非常に発展しており、様々な分野でコンピューターを導入している。
エストの新市街のセキュリティ技術も、もともとはノルデンからもたらされた物だと言われているのだ。
オリエンス大陸からノール大陸に向かうには、まず船でセントラル大陸に向かわなければならない。
ノール大陸に限らず、他の大陸に向かうには、セントラル大陸を経由するしか無いのだ。
何故なら航路に難所があり、まだ誰もセントラル大陸を経由しないルートを確立できていないからだ。
「何故、ノルデンへ?」
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