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「ふ・・、鋭いな。けど、実はその逆なんだな。遺体の場所が分かるような情報があったからでは無くて、情報が無かったから分かったんだ」
「え、どういう事?」
ユウは事の顛末を語った。
それは、寅すなわち旧市街の顔役達が女性を拉致し、あの酒場へ連れて行った後、殺した事をユウに自供した事。
そしてその後、旧市街でジニアの情報を集めていた時、女性の遺体が酒場の外に運ばれたというような情報がまるで無かった事と、多岐に渡った。
これを聞くと、ジニアは感心した。
「なるほど・・。確かに、遺体を運び出すような目立つ行動を取れば、誰かが見ていたはずだものね。しかも、旧市街ならなおさらね」
「そういう事だ。だが100%確定した訳じゃ無かった。俺があの手紙を出したのは、謂わば賭けだった。これで何も出ていなかったら、俺は偽証罪で逮捕されただろうな」
「まあ、結果オーライって奴で良いじゃない」
「そうだな」
こうやって話していると、ジニアは普通の女の子そのものだ。
だが、時折見せた口調や、身体から発せられたオーラは、まぎれもなく貴族や王族の類の物だった。
ジニア、君は一体、何者なんだ?
ユウは、この質問をしたくても出来なかった。
何故ならこの質問をしてしまえば、大切な物を失う気がしたからだ。
ユウとジニアは、街道を歩き続けた。
この世界にもモンスターはいる。
ただし、モンスターが生息しているのは、森の奥深く、山の頂付近、洞窟の奥といった、基本的に人が近寄って来ないような所だけだ。
今2人が歩いているような街道には、決して現れない。
モンスターも人間が怖いのだ。
その代わり、モンスターのような人間は良く現れる。
それはすなわち、野盗、強盗の類だ。
今、2人の前にも野盗が現れた。
10人以上いる。
ユウの今の契約内容は、『ジニアを殺そうとする者全てを始末する事』である。
なので、ユウは野盗が現れても黙っていた。
ジニアに危害を加えない限りは、見逃してやろうと思っているのだ。
ユウが動く条件は、野盗が攻撃してきた瞬間と、野盗がジニアを殺すようなワードを発した瞬間だ。
まさに、『絶対に言ってはいけない』という奴である。
では、スタートだ。
野盗の1人が話し始めた。
「有り金全部置いていきな!でないと、『2人とも殺す・・』」
デデーン!
野盗 OUT
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