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「でも、もし下級暗殺者がこの部屋に入って来た時は、入り口のドアを背にして窓からなるべく離れた場所に陣取るんだ」
「どうして?」
「下級暗殺者は間違いなく窓から入ってくる。王宮でも窓を割って入って来たが、あれは何も考えずに入って来たので無くて、窓を割って侵入するのがベストだと判断したからだ」
「そうなの?」
「連中も考えるさ。そこの地形を見て最も安全に侵入できる方法を、すばやく導き出す。そこの窓なら屋根から最短距離だし、他の人間に見つかる心配も無いからな。だから、俺が窓から出た後、窓は開けっぱなしにしておいてくれ」
「何で開けっ放しにするの?」
「窓ガラスが割れる音で他の客を起こしたくない。それに、他の客を巻き込みたくないからな」
「そうね・・」
「下級暗殺者が入ってきたら、奴が動くまで待つ。動いていない時に攻撃すると、素早い動きで避けられてしまうからな。でも攻撃に入れば、この狭い部屋だ。一直線にジニアに向かってこざるを得ない。だからその時に攻撃すれば、避けられる事はまず無いだろう」
「ええ。分かったわ」
「あと最後に言っておく。下級暗殺者の弱点は前にも言ったが、『鼻の部分の突起』だぞ!忘れるなよ」
「大丈夫!前聞いた時からずっと覚えてるから」
外はすっかり暗くなっていた。
ユウは窓を開け、窓から顔を出した。
「ここが最上階で助かったよ。屋根はすぐそこだからな。じゃあ俺は行く。後は頼んだ」
「ユウ!気を付けてね」
「お互いな」
ユウは窓から屋根にジャンプした。
ユウが屋根に上がると、確かに12体の下級暗殺者がいた。
そして、その後ろにもう2人・・。
「今度は『A』と『H』か・・」
「やあユウ君、久しぶりだね」
Aが言った。
「そうだな。アンタとは組んだ事もあったな」
『A』は黄緑色の髪で眼鏡をかけており、物腰は柔らか。
低く響く声。
まさに紳士と言える外見だ。
事実、Aはおそらく、この組織で最年長だろう。
ユウが見た所では30代の後半という所だ。
Aとは、一度だけ暗殺の依頼でコンビを組んだ事がある。
そしてもう1人。
ジニアよりも濃い紫色のロングヘアで、まさに『イケメン』というにふさわしい外見をした男だ。
年齢は、18、9と言った所か。
こいつが『H』だ。
そのHが、長い髪をかき上げながら言った。
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