川面を眺めながら

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 流れる川を眺める。  もっと濁っていると勝手に思っていたが、意外に澄んでいてきれいな川だ。  不思議と清々しい気分だ。  もっと恐い物かと思っていたが、今は安らいでいる。 「おいッ、早まるな!」 「うわ!」  いきなり両肩を掴まれて驚いた。 「な、なんですッ、あなたッ?」 「いや~やっぱここに来たら、やっておかなアカンと思って」  そこには小太りの、おじさんと呼ぶには歳とっていて、おじいさんと呼ぶには失礼になる感じの男性が立っていた。 「早まるも何も、もう僕たち死んでいるじゃないですかッ」  そう、ここは三途の川の渡し船の待合所。    今、僕はあの世へ行く船を待っている。 「だからええやないの、お約束や、お約束」 「お約束って……」  死んでまで、こんな思いをするとは思わなかった。 「まぁまぁ、ここで一緒になったのも何かの縁や」  おじさんが名乗ったので、僕も名前を言った。 「それにしても兄ちゃんまだ若いのに、どうしたん?  ワイは糖尿患ってポックリやけどな」  見た目まんまのおっちゃんだな…… 「ぼくは橋の上で川を眺めていたら、友達が『早まるなー!』ってふざけたら川に落ちて……」 「マジか兄ちゃん、シャレにならんで……」                                     ─了─
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