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スミスは無礼な振る舞いではあるが、誰も文句は言わない。金は権力だ。今、この村で権力を握っているのは宿屋の主人・ポールであり、それに次ぐのがスミスなのである。
「ああ、すまん。前振りが遅れたな。親父は今、野暮用で極東に行っててな。なんで、今回の会議は俺様が代理だ。ヨロシク頼む」
そう言ってスミスは、大理石の円卓の上で傲慢に足を組み上げた。
そんなスミスの傍らに、
「スミス。テーブルに足を乗せるのはマナーが悪いよ」
そんなことを諭す、涼しげな顔の長身の男が居た。
円卓を囲む皆がギョッとする。
権力者に逆らうことの意味に怯えている人々だ。
だが、そんな皆の危惧を裏切って、
「……クソッ。うるせぇヤツだ。昔からテメェは真面目だな、オーウェン……」
そう言って、スミスは足を下ろした。
「真面目なのは職業病ってヤツかな。道具屋は薄利多売。一個当たりの単価が低いのが特徴だからね。真面目にコツコツ。そうでなければ務まらない職業なんだよね」
涼しげな顔の男が言う。
スミスの幼馴染でもある、道具屋のオーウェンであった。
そのオーウェンの隣には、長い立派な髭を蓄えた、大層なローブと杖を装備した老人が座っている。鋭い目つきだ。
道具屋の隠居にして、昔は大賢者として名を馳せた最強魔法の使い手・ドッペルである。
彼はオーウェンの祖父に当たるのだが……。
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