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「確かに、黙ってても道具が売れに売れてったなぁ」
下座で話を聞いていたシオンも、幼い頃の、父が冒険者の需要に名物・ドラゴンキラーの生産が追い付かないと笑顔で汗を流していた姿を思い出す。
確かに、あの頃はヴィナス村の最盛期だった。
それが今となっては……。
街を歩けば摺れ違う冒険者など皆無だ。
どの店にも閑古鳥が鳴き、名産のドラゴンキラーは週に一本売れるか売れないかといった状況である。
スミスの宿屋だけはカジノを求める昔の常連によって、それなりに繁盛していたが、新規で開拓された客はない。その隆盛も風前の灯であるのは目に見えていた。
「今時、もう勇者とか流行んないしねェ」
オーウェンがしみじみと言う。
働き方改革が叫ばれる昨今、勇者は既に人気のジョブではなくなっていた。
重労働で、そのくせパーティーメンバーをまとめ上げなければいけない勇者というジョブは、今では敬遠されるナンバーワンなのである。
「最近では、魔導師やら、召喚師といった、あまり動く必要のない後方支援のジョブに人気が集まってるようでござるな」
「勇者をはじめ、戦士や武闘家は重労働だからね。あと鎧とか、重いし、汗臭いしで大変だよねェ」
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