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あたしは猫のミケ。
たった今、長年連れ添った玉二郎の膝の上で生き絶えたとこ。
私が死んだ理由? そりゃあ、老衰よぅ。
だって、かれこれもう20年も玉二郎とこの家で暮らしてきたんだもの。
玉二郎の膝の上はあったかくて、寝る場所には最高だったんだけどね。
こればかりは、しかたないでしょ。
「ミケ、あっちで待っててくれよな。俺もすぐ行くからな」
バカ、玉二郎。あんたはまだまだ来ちゃダメよ。
キリッとしてりゃ、いい男だっていうのに、あたしといる時はデレっと脂下がる顔を平気で晒すし、今なんか大粒の涙や鼻水なんか垂らして。みっともないったら。
そんなんだからいつまでたっても、独り身なのよ。
けどさ玉二郎。あんたは優しくて、いざっていう時は誰よりも強い男だって、ちゃんと分かってくれる人が現れる。だから、あんたは長く長く生きてね。
諦めないで。あんたの男気は、あたしが保証するからさ。
あぁ。悔しいなぁ。
あたしがもっとあんたの側にいてあげられたらね。
あたしなら、あんたの良いところも悪いところも全部知ってるのにね。
こん次は、あんたの側にずっといたいよ。
玉二郎、ごめんね。ありがとう玉二郎。大好きだったよ。
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