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いきなり真っ白な草むらに出た。穏やかな風が流れ、青い絵の具を水に流したような空がどこまでも広がっている。ふわふわと実態のないはずの雲の上を、神様は足跡もつけずに歩いて行った。
ここが、輪廻の流れのそばなのだろうか。神様は何も言わない。ただ変わらず命を大切に抱いている。
「ここだよ。」
「ここ?」
何が基準なのか。神様は何もないところで腰を下ろした。蝋燭を立てる台すら無いこの場所で、ゆっくり蝋燭達を並べて火をつける。
一メートル以上もある蝋燭に、1センチもない蝋燭に、細くくびれた蝋燭に。一つずつおいては着火マンに指をかける。一つずつ、一つずつ。
果てには、米粒でもつまんでるような手つきで何かを置いた。きっとそれも蝋燭なのだろうけど、あまりに小さすぎて、雲と同化しているようにさえ見えた。
「それにも火をつけるの?」
「うん。」
「すぐに消えちゃうよ。」
「うん。」
「それでもつけるの?」
「そうだよ。残酷なことをすると思うだろ。けどこの命は確かにあるんだ。」
静かな火が灯る。吹けば消えそうな、囲めば真っ暗になりそうな。あまりに弱々しい命。
それでも、生きているのか。僅かしか生きれなくとも。
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